◇◇

 今日の授業が終わった。



 カラオケ早く行こうよ。と、
 波多野くんの周りには
 8人ぐらいの男女が集まっている。


 パチリ。
 波多野くんと目が合った瞬間、

「美羽、またな!」

 教室中に私の名前が響き渡った。




 ひょえぇぇ……
 名前を叫ばれた。


 は……恥ずかしすぎる……



 私の喉から、声なんて出てきてくれなくて。
 真顔で頷くことで精いっぱい。



 だって……

 クラスの女子たちの
 好意的とは言えない視線の矢が、
 一斉に私に飛んできたから。



 波多野くんが教室を出たと同時に、
 その矢も
 ボロボロと地面に落ちてくれたけれど。

 心に掘られた、数多くの傷跡は
 簡単には消え去ってくれない。



 これ以上、友達に嫌われたくなくて。
 友達関係で、傷つきたくなくて。

 『一人が好き。ボッチが好き』を
 無言で演じているのに……



 私を嫌う敵が、
 ゾロゾロ現れちゃった不安感が
 いきなり襲ってきた。