透明感がある、桜色の頬。
 存在感のある、長いまつ毛。

 どちらにも、雫が残っていて。

 
 彼の頬で温められている私の太ももが
 涙に触れた場所だけ、冷たい。

 

 この人。
 何か、辛いことでもあったのかな?



 冷たさを含んだ秋の風が通り過ぎ。


 黄色と黒のチェックパーカーの袖から
 伸びた彼の白い腕が、
 寒そうに震えている。

 
 私はモコモコジャンバーを脱いで
 彼の背中にそっとかけてあげた。



 今の私にできることは。
 温めてあげることくらいだから。


 彼の心が
 冷たい風に傷つけられないように。



 そして私は、
 太ももに乗っている彼の頭を
 そうっとベンチに置いた。


 
 辛いこと、消えてくれるといいね。
 バイバイ。