「美羽が鬼ごっこしてる時なんてさ、
子供かよっていうくらい、
真剣に鬼から逃げ回って。
でも美羽、足遅いよな。
いっつも、すぐ捕まってんじゃん」
そんな恥ずかしいところまで
見られてたの?
「小学校の時の50m走。
学年一、遅かったし……」
「鬼ごっこの相手、小学生だろ?
高校生が小学生に負けるとか
信じられないんだけど」
「波多野くん
今度子供たちと勝負してみてよ。
みんな、すっごく足が速いんだから」
「負ける気がしねえし」
フッと鼻で笑った波多野くんの
穏やかな笑顔に見とれていたのに。
急に凛とした瞳が、私に向けられ
私の肩がぴょこんと飛び跳ねた。



