朝、5時半過ぎ。
 言霊(ことだま)神社の境内。


 長いベンチの端っこに。
 私、前園 美羽(みう)は座っている。


 マネキンですか?って思えちゃうほど
 固まっている。


 肩スレスレの内巻きカールの毛先まで。
 カチンコチンの硬直状態で。



 だって。おかしいでしょ?


 私の太ももの上に
 乗っているんだよ!!


 見惚れてしまうほど綺麗な顔が。
 苦しそうな表情のまま。瞳を閉じて。



 天使? 妖精? 幽霊?
 いやいや、人間、人間。



 背中に羽なんて生えていないし。

 透けるとか、足がないとか
 オカルトチックなところは
 どこにもない。



 高3の私と同い年くらい。

 色白で。小柄で。
 華奢な男の子。