僕だけにナデナデさせて アミュ恋 3曲目


 どうしていいかわからず
 アタフタしている私の耳に、
 イヒヒと悪そうな声が
 飛び込んできた。



「拒否るなら、
 美羽の手を繋いで
 無理やり引っ張っていくからな」



 手を……つなぐ?


 ムりだよ。ムリムリ。
 だって、ここ、教室だよ。



 今でさえ
 波多野くんファンに睨まれているのに。
 
 手なんか繋いだら
 完全にアウト。


 教室での私の居場所
 なくなっちゃうよ。



「行くよ……
 ピクニック……」



 ため息と一緒に出た、私の諦め声に
 波多野くんの笑い声が重なった。



「アハハ。
 美羽、行きたくないのがバレバレ」



 気づいているなら、放っておいてよ。



「弁当を食べる場所に着いたら
 美羽に良いものあげるから」



 物でつられるような女じゃ
 ないもん。

 そう思って
 口尖らせてみたけれど。


 波多野くんの笑顔が
 小学生みたいに純粋で。

 瞳が朝日で輝く湖みたいに
 キラキラしていて。


 私はお弁当を手に取ると、
 波多野くんの後ろを
 無言でついて行った。