マー君は、本当に優しい。



 子供の頃からずっとそう。

 僕が泣き止むまでは
 絶対に声なんてかけてこない。


 魔法でも使っているんじゃないかって程
 自分の存在を消してくれる。



 僕の心の中で暴れていた
 悲しみの波が、
 ゆりかごぐらいの
 穏やかな揺れに変わったころ

 マー君が僕に
 不愛想な声を発した。



「俺の期待、裏切ってんじゃねえよ」



「何……それ……」



「春が笑いながら帰ってくると思ったから。
 張ってやったのに……」



 ほら、やっぱり優しい。



 マー君パパに100%激怒されるのに。

 僕のために
 言霊神社に結界を張ってくれて。



 僕はベッドの上で体を起こすと、
 三角座りで
 膝の上にほっぺを押し当てた。



 笑顔なんて湧き出てこない。

 うつろな瞳のまま
 心の中の想いをマー君に吐き出す。