止められない思いを
 慶介くんにぶつけ切った時

 私の目の前には
 怒りが爆発した慶介くんの顔があった。



 固く握りしめられた拳が
 振り上げられている。


 怖い!! 殴られる!!



 身の危険を感じて
 頭を抱えしゃがみ込んだ私。


 
 ん……?

 拳が……飛んでこない?




 何が起こったのかわからなくて
 ゆっくり瞳を開いて見上げると

 私を殴ろうとした慶介くんの拳を
 春輝くんが手のひらで
 受け止めていた。




「ダメだよ。
 女の子に手をあげたら」



 言葉は優しい。

 でも、春輝くんの眼は
 1ミリも笑っていない。



 地を這うような低い声が
 慶介くんを脅している。