涙が勝手に溢れてくる。


 止められないし
 止める気力すらない。



 涙で視界がゆがんだまま、
 私は100段の石段を登り始めた。



 石段を登り終え
 誰もいない参道を通り
 拝殿の前に来た。



 神様に聞いて欲しいことは
 山ほどある。

 叶えて欲しいお願いだって
 数えきれないほど。



 でも。


 これだけでいいから
 叶えてください。



 ――慶介くんがしーちゃんに
   暴力を振るいませんように――



 思いっきり鈴を鳴らして。
 心の中で、何回も唱えた。



 涙で私の顔はぐちゃぐちゃ。


 神様だって
 こんな醜い顔は見たくないよね?



 でも、我慢してください。


 これで最後にするから。

 言霊神社の神様に
 お願い事をするのは。