「しーちゃん。
 私が作った卵焼き、好きでしょ?
 一個あげよっか?」


「美羽ちゃん、ありがとう。
 でも、今日は
 お腹の調子が良くなくて……」


「じゃあ、ほうれん草の胡麻和えは?
 お腹に良さそうじゃない?」


「今日は何も……
 食べられそうにないの……」


「そっかぁ。勧めてごめんね。」


「そんな。美羽ちゃんは悪くないよ。
 私の方こそ……ごめんね……」



 しーちゃんがマスクをしている時。

 いつも私は
 見て見ぬふりをする。


 辛そう瞳を光らせる
 しーちゃんの心の痛みを。



 だって。

 しーちゃんの恋に口出しして
 嫌われちゃったらイヤだもん。



 学校で私と仲良くしてくれる
 唯一の友達を
 なくしたくないもん。



 でも……


 おかしい。絶対におかしい。



 彼氏だからって。
 しーちゃんのことが大好きだからって。


 殴っていいはずがない。



 春輝くんなら……

 絶対に女の子を殴ったり
 しないよね……?