春輝くんにサヨナラしなきゃ。
 でも、離れたくない。



 相反した思いが
 ごちゃまぜになり
 私が固まっていると

 細々とした春輝くんの声が
 空気を揺らした。




「僕と二人だけじゃなければ
 いい?」


「え?」


「マー君と3人なら……
 僕に会ってくれる?」


「それは……」


「男の子だけじゃダメだよね?
 明梨んは? 
 明梨んが一緒ならいい?」




 ここでも明梨ん登場かぁ。
 



 春輝くんの頭の中

 どれだけ『明梨ん』に
 支配されてるの?




 天然で悪気が全くないところが
 余計に残酷なんだよ。




 今ので
 心のモヤモヤが吹っ切れたよ。




「春輝くん、バイバイ」




 今自分にできる
 とびきり笑顔を残し。



 私は春輝くんの前から。
 言霊神社から。

 思いっきり走って逃げた。