情報量が余りにも足りていない、如何にも怪しいこの状況で、素直に「はい、喜んで」なんて云う人、果たして居るのだろうか。

普通なら、送り返さない。

そう思った私は、その手紙を捨てようとした。

しかし、その手が止まる。

──でも、相手には私の名前も、住所も知れてる。このまま無視をしたら反感を買って、ここに押し掛けられる可能性だって……。

考えたら、ゾッとした。



「私はともかく……」



それ以上に怖いのは、私の家族や知り合いに迷惑がかかったら、とんでもないということ。

しばらく考えた結果、律儀にと言うべきなのかは分からないが、住所を教えてくれているのだからと、返事を書くことにした。

今時、手書きで手紙なんて、そうそう書くことが無い。

引き出しの奥の奥の、奥の方にしまってあった便箋セットを引き摺り出した。

そして、ボールペンを握り、シンプルな便箋と向き合う。

向き合う……ものの、言葉が浮かばない。

これから、この紙を送る相手が、どんな容姿をしていて、どんな性格なのかも分からないのに、一体何を返せば良いのだろう。

読んだ内容の中に「僕」と出てきた。

つまり、相手は男子かもしれない。

そう思った途端、変に意識してしまった。

さっきまで、あれ程怪しんでいた私が。

頭を左右に振り、邪念を吹っ飛ばす。

そして、思い付いた。

怪しいと思うことは、何もかも全て聞き出してしまえば良いということを。

きっとそれだけで、一枚は埋められるはずだ。

普段、何をしている、どんな人なのか。

何故、手紙を送る相手が私で、そもそも何故、私を知っているのか。

不信感をたっぷり抱いた文章なら、次々に出てくる。

見事に書き上げた私は、それを学校の鞄に入れた。

明日、通学途中にある郵便局前のポストに投函しよう。