いつか、泣きたくなるほど大好きなキミが




そして、開演してから、大学生や社会人バンドの2組を見送った。

腕時計を見れば、13時37分。

やや時間が押し気味だが、次がイチさん達の番だ。

その時が少しずつ、少しずつ迫っている。

変に鼓動が脈を打つ。

すると、今回のライブの総合司会者が次の出演者を呼ぶ。

予定通りに、ステージに現れたのは、先ほどまでの社会人の人たちと比べると、確かに少し若い男子6人組だった。

それぞれの配置に着いた6人の内、ステージの左奥にテナーサックスを携えている人が居る。

私とは、反対側だ。

あの人なんだ、あの人がイチさん。

彼の横顔をしっかりと捉えると、胸が不思議な高鳴り方をした。

無造作な暗めの茶髪の男子。



「あれ? どこかで──」



私の一人言は、スピーカーの大きな音に掻き消された。

掻き消されたと言っても、極端に激しい曲調というわけではなく、ポップで爽やかな楽曲。

その中でも、私が意識しているからか、イチさんの音がよく聴こえる。

好きかもしれない、直感的にそう思ってからは聴き入っていた。

ジャズライブなら、我が家でいくらでも聴いていた。

だけど、この類のライブは初めてで、ステージ上の主役たちも、周りも溶け合っていくのが見えた。

何も知らなくても、好きになっていける。

私もこの会場に溶け合える。

そんな気がした。