いつか、泣きたくなるほど大好きなキミが




それから手紙のやり取りは、何往復も続いた。

『バンドでサックスなんて、珍しいですね』

『やっぱり、そうなんですかね。もともと吹奏楽部だったんですが、ある日、友人にバンドに誘われたんですよ。それで、出来る楽器は幼い頃にしていたピアノと、サックスって答えたら、強制的に入れられちゃって。キーボードは既に居たから、じゃあ、お前はサックスな、って』

『仲が良いんですね』

『仲が良いのかどうか……。まあ、気兼ねなくいられる仲ではありますね』

『それを仲が良いって言うんじゃないですか? 私にもズバズバ言ってくれる友達がいます。私もピアノを弾くんですが……ジャズが趣味なので、それを学校で弾いても、あまりよく分からないって、素直に言ってくれるんです。それに対して、私もムキになっちゃって』

『良いお友達じゃないですか。そういう事って気心の知れた仲でないと、なかなか言い合えないと思いますよ。ところで、ヒマワリさんの趣味は、ジャズなんですね。尊敬するプレイヤーなんか居るんですか?』

『祖父が昔から趣味にしていて、その影響を受けました。趣味から、ジャズ喫茶まで開業しちゃったんです。私の尊敬しているのは、ズバリ叔父です。ベーシストなんですけど、もの凄く深みのある音で、とても心地好いんです。圧をかけてくる時の音も格好良くて。あとは──』

『叔父さんですか。身近に尊敬できる人が居るなんて、とても幸福なことですね』

『ごめんなさい。以前の手紙で、熱く語ったりなんてして』

『謝らないでください。ヒマワリさんが、ようやく自分のことを話してくれるようになって、嬉しいんです。とても興味深いです。もっと聞かせてください』

私の趣味に、こんなにも耳を……いや、筆を傾けてくれる人は、祖父や叔父以外に居なかったため、とても嬉しかった。

毎回、イチさんからの手紙が届く度に待ちきれず、ポストの前で直ぐ様、開く。

やり取りの中で、僅かに感じる包容力。

どんな紳士なんだろうと、つい妄想をしてしまう。