いつか、泣きたくなるほど大好きなキミが




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下校中。

友人等とも別れて、私は今、1人になった。

それなのに、いつもの日課であるはずの音楽を聴くことも忘れて、早足で歩いていた。

正直、こんなことは初めてだった。

自宅が見えてくると、歩く速度はますます上がっていく。

見知らぬ相手であれど、待ちきれないから。

そうして、自宅のポストの前に辿り着き、高鳴る胸を抑える。

深呼吸をして、中身を出すと、そこに入っていた郵便物は、全部で3通だった。

1通目は母宛ての何やら重要書類で、2通目は祖父宛てで、健康食品の勧誘チラシだった。

そして、3通目──。



「あった……!」



お目当ての品を見つけて、思わず飛び上がってしまった。

これを持って、自室まで走ろうかなんて迷ったのは、ほんの一瞬。

我が家兼ジャズ喫茶の外に設置してあるベンチまで駆け寄って、腰を下ろす。

直ぐに、封を切る。

相変わらず、紙を目一杯使って書かれていた。

そこに、律儀さを感じた。

『こんにちは。やっぱりヒマワリさんも、音楽がお好きなんですね。安心しました』

「安心」?

変わったタイミングで、可笑しな言回しをする人だ。

『僕が活動しているバンドは、ヒマワリさんの言う通り軽音楽、ロックです。担当はテナーサックスしてます』



「サックス……!」



思わず、声が出る。

そっか、確かに今時ロックバンドなんかでも、サックスが居たりする。

今はそんな形もあるんだ。

少し感動してしまった。

この感動は、格好良いなどといったものではない。

ただ同志を見つけたような、そんな錯覚に陥ったからだ。

初めの手紙で何やら、あなたは詐欺にどうたらこうたらとあったが、音楽好きに悪い人はいない。

そんな根拠も無い考えで高揚したまま、今回の手紙を読み切ると、直ぐにまた返事を書くことに取り掛かった。