私はきっと、湊先輩のことを諦められないんだ……。瞳から次々と溢れる涙を、服の袖でゴシゴシと拭いた。
―――ガシッ。
……え? 涙を拭っていた手を、湊先輩に掴まれる。先輩はやわらかい笑みを浮かべながら、長い指でそっと、私の涙を拭った。
「莉子、あの人は……俺の母親」
母、親?
「……へ?」
湊先輩の言葉に、思わず変な声が漏れる。先輩、今なんて言った?
「さっきの人は、俺の実の母親だよ」
……う、うそっ……。
「もしかして、それが避けてた原因? デートの約束破った日に、俺が母親といるところを見て誤解した?」
半ばパニック状態のなか、図星を突かれ、返答に困る。

