「じゃあ、改めまして自己紹介を――」

「ああ、ちょっと待って。もうちょっと」


私が火を消したところでこちらを向いた男を遮り、二つ目の玉子焼きをまずは皿に盛りつける。

ただコンロの火を見つめていただけのようにも思えたが、焼きあがった玉子は、以前より砂糖が多く入っているにも関わらず、見た目が悪くなるような焦げは一切ついていなかった。
どうやら、ちゃんとサポートとしての役割は果たしていたらしい。よくよく思い出してみれば、途中で何やらブツブツ呟いていたような気がしないでもない。

玉子焼きを皿に盛ったところでフライパンを置き、私も男の方を向く。
テーブルという間に挟まる物も、距離を空けることもなくこうして向き合うのは、何だか変な感じがした。
でも不思議と、嫌じゃない。この男の存在に慣れたからだろうか。

上背のある男を見上げる形で、私はその灰色の瞳を見つめる。
男も、灰色の瞳で真っすぐ私を見つめ返して、口を開いた。