「人生どこでどうなるか分かんないよね。安定を求め続けた慎重派の私が、まさか雲の上の存在だと思っていた結斗さんとこんな風になるなんて、思いもしなかったもん」

「だよね。あの堅物な蜜葉がまさかのまさかだよ。でも勇気をだして、副社長の胸に飛び込んでよかったじゃない。幸せになりなさいよ」

「ありがとう、茜。ところで茜の方はどうなのよ?」

「え? 私?」

明らかに動揺した茜を見て、これは何かあると悟った。

「その顔は何かあるでしょ? 今日は茜が話してくれるまで帰さないからね」

にんまりと笑い茜を見つめれば、茜は観念したように話しだした。

「実は……気になる人がいて。というか、その人とつい最近付き合うことになったんだよね……」

「えー!」

まさかのカミングアウトに思わず、そう叫んでしまった。他のお客さんの注文の品を作りながら何事かとこちらを見るマスターに平謝りをしつつ、茜の話の続きを待つ。