「蜜葉さん、今日は私のワガママを聞いて、食事に来てくださって、本当にありがとう」

先に口を開いたのは、結斗さんのお母さんの方だった。

「いえ。こちらこそ誘っていただいて、ありがとうございます」

「私、結斗に大切な人ができたと知ったとき、本当に嬉しかったの。あの子、蜜葉さんの話をするとき、すごく目を輝かせて、クシャッとした笑顔を浮かべて幸せそうに話すの」

「結斗さんがですか？」

お母さんの口から語られた意外な事実に驚いて、私は目を大きく見開く。

「ええ。結斗に聞いていると思うけれど、私はあの子をおいて彩瀬家を出てしまったから、ずいぶんと寂しい思いをさせてしまったと思うの」

お母さんが切なげに笑うのを見て、胸がちくりと痛んだ。

「春日井さんの計らいで、こうやって結斗に会えるのはすごく嬉しいしありがたいけれど、私があの子に残してしまった心の傷は深くて、それが原因だと思うのだけれど、結斗は恋愛や結婚に消極的で、ずっと距離を置いていたのよ」

「そうだったんですか」