懐妊一夜~赤ちゃんを宿したら極上御曹司の盲愛が止まりません~

「きゃっ!」

ポキッという音が耳に届いたと同時にバランスを崩した私はその場へと転げ落ちた。

「……最悪だ」

自分の状況を理解して思わずそんな言葉が漏れる。視線の先には折れた黒いヒールがあって、まさかこんなタイミングで折れるなんて今日は本当に何もかもついていない。

道行く人がチラッと座り込んだままの私を見ては通り過ぎていく。なんだかとても惨めだ。重たいため息をつきながら、折れたヒールを手に取りゆっくりと起き上がる。

時間も時間なだけに周りのお店は閉店時間を迎えていて、新しい靴を買おうにもできそうもない。この状況でこれ以上歩き回ることは難しいだろう。

だとすれば、駅前まで戻ってタクシーを捕まえて茜の家に向かおう。そして話を聞いてもらわなければ、気持ちが落ち着きそうにない。