それにしても、間近で副社長を見てみると、鼻の高さと涼しげな雰囲気の目元が際立ち美しい、会釈を返しながらそう思った。

シャープな顎ラインに奥二重の切れ長で妖艶な瞳、薄型で形の綺麗な唇。そして、女の私よりも綺麗なんじゃないかって思うくらいのきめ細やかな肌。

ショートの黒髪からは清潔感が漂っていて、胸元から覗く涼しげな水色のネクタイが彼の爽やかなイメージをより一層引き立てている気がする。絵に描いたような眉目秀麗な彼の姿を見れば、皆が騒ぐのもよく分かる。

そして、そんな外見だけではなく、内面もとても素敵なひとだということを私は知っている。あれは、入社試験の日のことだ。方向音痴の私は会社に向かう途中に道に迷ってしまったのだ。

携帯の充電が切れて、検索することもできず、そして突然振りだしたにわか雨に、喫茶店の軒下に逃げ込み、途方に暮れていた。