七夕の日を境に副社長は私を【蜜葉】と呼ぶようになった。私は、副社長の事を会社の外では【結斗さん】と呼んでいる。

副社長との関係を公にはしていない。もし公にしてしまったら私に対する女子社員の視線は、えげつないものになるだろうし働き辛くなるのが目に見える。

それに、結斗さんのお父さんである彩瀬社長が私みたいな平社員と自分の跡を継ぐ大切な息子が仲良くしていると知ったら良くは思わないだろう。

私自身、結斗さんとこんな風な関係になっていることが信じられずに夢心地の状態なのだから。

「蜜葉? さっきからぼーっとしているけれど何か考え事か?」

そんな言葉と共に後方からいきなりのバックハグ攻撃に私の心音は一気に高鳴った。

「ひゃっ!」

「うぶな反応を見せてくれる蜜葉は揶揄い甲斐があるな」

「もう、結斗さんってば!」

ぷーっと頬を膨らませながら後ろを振り向けば、そこには悪戯に笑う彼の姿がある。結斗さんのストレートな愛情表情に私は翻弄されてばかりだ。