ランチを食べ終えて、茜と共に職場に戻ったのは十三時を少し過ぎた頃だった。

午後も仕事を頑張ろうと気合いを入れ直して自分のデスクに座り、午前中に上司に頼まれた書類作成に取り掛かろうとパソコンを開いたそのとき、颯爽と現れたのはーー。

長身の抜群のスタイルで、ネイビーのスーツをカッコ良く着こなしている眉目秀麗な男性。

彼こそ、さっき茜との話の話題に上がっていた人物であり、私が勤務する彩瀬商事の副社長こと、彩瀬 結斗(あやせ ゆいと)さんだ。

彩瀬商事は世界五ヶ国に約二十の拠点を持つ大手総合商社で、エネルギー、機械、食料分野での輸出入取り引きや事業投資、また国内ではマンション建設、レストランプロデュースなど幅広いビジネスを展開している。

結斗さんが副社長に就任したのは、昨年のことだ。若干、三十一歳で副社長になったわけだが、将来的には現社長である彼のお父さんのあとを継いでこの会社のトップになるのだろう。

そんなイケメン御曹司である副社長に皆の視線が注がれて、すれ違い様、挨拶を交わす女子社員の目がキラキラと輝いているのは言うまでもない。