懐妊一夜~赤ちゃんを宿したら極上御曹司の盲愛が止まりません~

「……ふ、副社長こんばんは。……お疲れ様です」

他人の空似なんかじゃなかった。その事実に突如、不安と焦りが襲ってきた。

どうしよう、どうやってここを切り抜けよう。
まともに話したこともないし、私みたいな平社員が軽々しく話せる相手なんかじゃない。

ああ、早く食べ終えて帰れば良かった。何より副社長の存在に気が付かなければ良かったと、多大なる後悔が胸を襲う。

「驚いたよ。ここで会うなんて。芹澤さんもよくここに来るのか?」

「あ、はい……」

私の存在に気がついて、彼が近くの席へと移動してきたが、それを拒否する権利は私にはなくて、戸惑いが広がっていく。

副社長が一社員に過ぎない私の顔と名前を覚えていたことが意外……いや、誤算だった。

「……副社長もよくアネッロに来られるんですか?」

「ああ。ここのオムナポリのファンなんだ。無性に食べたくなる時にこうやって食べに来るんだ」

「そうでしたか……。それにしてもよく私の顔と名前分かりましたね」

「名前を覚えていたのは普段から一度会った人の顔や名前は覚えておくようにしているからね。芹澤さんこないだお茶出ししてくれただろう?」

「あー、そうでしたね……」