高鳴る鼓動を感じながら、声があった方に視線を送る。

「……っ」

結斗さんの存在に気づき、思わず目を見開いた。そして、慌ててドアを閉めようとしたが、

「芹澤様、結斗さんの話を聞いてあげてください」

今にも泣きそうなか細い声で、春日井さんがそう言って、ドアに手を掛けた。

「か、春日井さん?」

「結斗様の一番の味方でいると、紗代様が出て行ったあの日に心に誓ったはずでしたのに、私は今回、旦那様の命令に背くことができず、結斗様にも芹澤様にも辛い思いをさせてしまいました。本当に申し訳ありません」

「春日井さん、頭を上げてください」

慌てて春日井さんの肩に手をやると、震えていることに気がついた。

「もういい。春日井の気持ちは分かった。ちゃんと向き合う機会をくれたことに感謝している。だから自分を責めなくていい。車で待っていてくれ」

「かしこまりました」

春日井さんを見つめる結斗さんのまなざしは優しい。