「……蜜葉、どうするつもり？　今日の今日じゃいきなり決められないかもしれないけれど」

「……」

「妊娠のこと、副社長に話さなきゃ。だってこれはふたりの問題でし……」

「それはできないよ」

「なんで？」

「結斗さんはもう新しい生活を始めているし、私が妊娠のことを告げたら、結斗さんの将来の妨げになってしまうから」

「だとしても、これは蜜葉だけの問題じゃないよ。ひとりで抱え込もうとするのは違うと思う」

茜が言うことは頭では理解できる。私を心配する茜の気持ちも痛いくらいに伝わってくる。それでも……

「茜の気持ちはありがたいんだけど、この話を結斗さんにして、それが結斗さんのお父さんに知られたら、と思うとすごく怖いの」

「どうして？」

「結斗さんは責任を取ろうとするかもしれない。だけどお父さんは何が何でもそれに反対するのが目に見えるの。お腹の子を堕ろせと言うか、それか認知して引き取ると言い出すかもしれない」

頭に浮かんだのは、結斗さんのお母さんの顔だ。結果的に大切な我が子を彩瀬家に取られて、家を追い出された話を結斗さんから聞いているだけに私も同じ目に遭うのではないかと思った。