やはり、彼と湖川さんの関係はよく分からない。彼は、湖川さんのことが好きなのだろうか。それとも、そのような気持ちは全くないのだろうか。もし、好きなのだとしたら、この誘いを簡単になんの躊躇(ためら)いもなく断るようなことはしないではないだろうか。しかし、好きでも何でもないとしたら、遠足の時、湖川さんを背負ったりはしなかったように思う。
以前から考えているが、2人の関係はよく分からない。好きだとか嫌いだとか、そういう感情を越えた絆で結ばれているような気がする。

「私、数学がとても苦手で、このままだと30点を取っちゃいそうで。それで、藍ちゃんと佐倉くんに勉強を教えてもらうことにしたの。だから、もし真島くんも苦手な教科があったりしたら、教えてもらわない?」
「別に、苦手な教科なんてない。でもまあ、パートナーのせいで夏休みが、研究所の手伝いで潰れたら嫌だよな。」
「そうなんだよ。」
「ところで、君は苦手な科目は無いのか?」

真島くんが湖川さんに尋ねた。

「わ、私は、え、えっと…。」

湖川さんが困ったように口を濁した。

「藍ちゃんは、凄いんだよ〜!」

湖川さんが困ったような顔で黙っているうちに、桃野さんが口を開いた。

「藍ちゃんは、中学時代、ずっと数学の成績が学年1位だった天才なの!」
「ちょっと、ももちゃん、何処からその情報を…!?」
「陽芽ちゃん情報!」

陽芽。おそらく、湖川さんの双子の妹の湖川陽芽さんのことだろう。

「ふーん。じゃあ、テストは楽勝なんだな。」
「それが、藍ちゃんは、数学に関しては天才的なんだけど、苦手な教科もあるんだよ〜。」
「苦手な教科?何だそれは。」
「それはね〜、」
「待って、ももちゃん、駄目──」