「いいかな…?」
「いいけど…、僕は邪魔じゃない?よかったら2人で勉強してきていいよ。」
「邪魔なんかじゃないよ!」
「え?」
「私ね、藍ちゃんにはもっと友達を作って欲しいの。このクラスで私以外に藍ちゃんと話してるのって、佐倉くんと真島くんくらいじゃん?真島くんはパートナーだから、“友達”という関係は難しいかもしれないけど、佐倉なら藍ちゃんの友達になれる!これはチャンスなの!!」

言葉一つ一つにとても熱意がこもっていて、桃野さんは本当に湖川さん思いなのだということを再確認できた。

「あ、あとそれからね、あの…、その勉強を、今月の顔合わせにできたらなぁって。えへへ。」

桃野さんが笑いながらそう言った。
なるほど。目的はそれか。顔合わせをするから、僕がいなくては駄目なのか。そして、学校は顔合わせにカウントされないから、勉強場所も学校の図書館ではなく、地域の図書館かファミレスを提案したと言うわけだ。
やはり、桃野さんはまだまだよく分からない。初めは大人しいと思っていたけれど、案外そうでもなさそうだし、天然だと思うこともあれば、今のように計算高い面もある。
湖川さんもなかなかミステリアスだけれど、もしかしたら、桃野さんはそれを超えているかもしれない。

「分かった。じゃあ今週の土曜日、ファミレスで勉強しようか。」

そう言った瞬間、桃野さんの顔がぱあっと明るくなった。

「ありがとう佐倉くん!佐倉くんがパートナーで良かったよ!早速藍ちゃんにも声をかけてくるね〜!」

桃野さんはそう言うと、走って湖川の席へと向かっていった。
まんまと利用されてしまったわけだが、悪い気はしない。
僕と湖川さんは今のところ、ただのクラスメイトだが、もしかしたら、友達になれるかもしれない。
友達の定義が何なのかは知らないけれど、僕はもっと、彼女と話がしてみたい。