「『5月限定!さくらんぼパフェ』になります。」

店員は、丁寧に2つのパフェを机に置いた。

「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
「はい。」
「では、ごゆっくりどうぞ。」

私は目の前に来たパフェに手をつけた。

「あの、先程何を言いかけたのですか?」
「いや、もうそれはいいんだ。それより、俺が優しいとは、どういうことだ?どうしてそう思ったんだ?」
「あ、えっと…。」

改めて、相手の何処が優しいのか、面と向かって言うとなると、なかなか恥ずかしい。

「例えば、今日も、一緒にゴールしてくれたじゃないですか。」
「それは、当たり前だろ。反省文、嫌だし。」

きっとそれは嘘だ。私が真島くんの反省文も書くと言ったのに、彼は一緒にゴールしてくれたのだから。しかし、私は敢えて突っ込まないことにした。

「それでも、私は嬉しかったですよ。」

初めて会ったあの日から、真島くんはぶっきらぼうで、なんとなく、私を避けているのではないかと思っていた。
でも、それは間違いだということが、今日、はっきりと分かった。
『一緒にゴールしなくちゃ、意味無いんだよ!』
感情的に叫ぶ彼に、私は救われた。

「ありがとうございます。」

私は少しだけ微笑んだ。本当はもっと笑えたら良かったけど、人前で自分の感情を出すことは、あまり得意ではない。
その時、“ガシャン!”と、物と物がぶつかり合う音がした。見ると、真島くんがスプーンを机の上に落としていた。