「ごめんなさい。」
「何で謝るんだ?」
「こういうのが早く決まってしまうのは、あまりにも男性的かと思いまして…。」

小1の時、男子達に、男じゃないのかと疑われてから、私は髪を短くしないようにした。しかし、外見が女子に見えたところで、内面も女性らしくしなければ、そんなもの、意味がなかったのかもしれない。

「そんなことないだろ。」
「そうですか…?」
「優柔不断な女子もいるだろうけど、そうじゃない女子も普通にいるだろ。」

真島くんが、私を真っ直ぐに見つめた。

「それに、君のことを男性的だと思ったことはない。」
「えっ…?」
「意外と繊細だろ。あんまり考え過ぎるなよ。」

『繊細』。他人から言われたのは、きっとこれが初めてだ。

「とにかく、早く決まったんだから、とっとと注文するぞ。」

そう言って真島くんは、机の隅にあった呼び出しボタンを押した。
暫くして、店員さんがやってきた。

「お待たせ到ました。ご注文は何になさいますか?」

私は、メニューを開いた時から気になっていた“それ”に目をやった。

「「これ。」」

真島くんと目が合う。
なんと私達は全く同じ商品を指さしていた。

「『5月限定!さくらんぼパフェ』を…お2つ…でよろしいでしょうか?」
「は、はい。」
「他にご注文はございますか?」
「私は以上です。」
「同じく以上で。」
「かしこまりました。少々お待ちくださいませ。」

店員さんは一礼すると、厨房へと戻っていった。
二人の間に、しんとした空気が流れる。
周りを見渡すと、他のパートナーは、やはり腕を組んだり、手を繋いだり…。私達だけ、場違いのように感じてしまう。

「甘いものが好きなのですか?」

このまま無言のままでいたら、気まずくなってしまいそうで、私は口を開いた。

「甘いものが好きというより、さくらんぼが好きなんだ。」
「そうなんですか。」

意外だ。いつも無口で気難しそうにしている真島くんと、さくらんぼがイメージの中で上手く結びつかない。

「そんなことより、君に聞きたいことがあるんだけど。」
「何ですか?」
「佐倉蛍貴とは、どういう関係だ?」