再び目を開くと、目の前には見慣れた光景が現れていた。
大きなテーブルに洒落た椅子。窓の外からは広すぎる緑の庭が見える。
そうだ。ここは、高校に入学する前まで俺が住んでいた家だ。懐かしい。今はもう──

「お母さん、お父さん、おはよう。」

小さな3〜4歳くらいの子どもが、俺の横をすり抜けて、母と父に声をかける。
これは、きっと自分だ。アルバムの中でしか見た記憶がないが、紛れもなく、自分自身だ。
そしてこの映像は、おそらく俺の過去だ。
向こうからは俺が見えていないらしい。

「おはよう。」
「早起きね。」
「うん!」

俺は、産まれた時から、他の家庭の子ども達とは少し違う、特別な子どもだった。
美人の母に、“イケメン議員”と世間から言われている父を持ち、執事と家政婦を雇い、豪邸のような、大きな家に住んでいた。
幼い頃から、塾、ピアノ、バイオリン、習字、水泳、サッカー、英会話…と、様々な習い事を習わされ、多忙な日々を送っていた。
しかし、そんな日々に、不満を抱いていたわけではない。産まれた頃からそれが当たり前で、家族仲良く暮らせれば、それだけで良かった。