屋上の扉は、まるで当たり前のように、いとも簡単に開いた。
屋上に出ると、強過ぎず、弱すぎない風が、全身に当たる。

「で?私に何か言いたいことでもあるの?」

彼女が、短い髪をなびかせながら、真っ先にそう尋ねた。

「まさか、愛の告白!?」
「それは無い。」

「きゃあっ!」とわざとらしくはしゃぐ影石愛に、俺は冷たく返した。

「なんだ。つまんない。じゃあ、一体何なの?」
「俺の話は後で良い。先ずはお前から話せ。」
「えっ?」
「お前は一緒に帰ろうと言った。何か俺に話があるからそう言ったんじゃないのか?」

俺がそう聞くと、影石愛は大きな溜息をついた。

「一緒に帰ることに、別に理由なんてないわよ。」

普通、理由も無く、帰りを誘うだろうか。
恋人でもパートナーでもあるまいし。

「まあ、強いて言うなら…、広大、やっぱり私ともう一度付き合わない?」

俺は片手で頭を抱える。