「別に。」
「そんなことないでしょ。ぼーっとしてるように見えたよ?」
「してない。」
「…まあ、それならそれでも良いけどさ。あ、そうだ!今日は部活無いんでしょ?帰らないの?」
「お前に関係無い。」
「酷ぉ〜い。」

こいつと話していると、無意識のうちにストレスが溜まる。
俺はまだ許していない。この前だって、はっきりとそう言ったはずだ。それなのに、気軽に声をかけやがって。
それに、こいつのせいで、彼女とあんなことに…。

「もし良かったら私と一緒に帰らない?」

上目遣いで、誘われても、今では何も感じない。きっと昔の俺だったら、喜んでいるだろうけれど。もう、昔とは違う。

「あのなあ、お前にもパートナーがいるだろ。佐倉と帰れよ。」
「えー。」

俺は辺りを見回す。
こんな会話を誰かに聞かれていたら大変だ。
しかし、もうほとんどの生徒は帰っていて、教室には数人しか残っていない。
しかも、数人の中のある3人の男子がとても大きな声で話をしている為、俺達の会話など、誰にも聞かれていなそうだ。