「落ち着け。急にそんなことを言われても、全然納得できない。その考えに至った経緯を、ちゃんと説明しろ。」

恐怖で身体が動かなくなる中、私は必死で口を開く。

「細かい経緯はありません。だって真島くんは、ずっと私のことが嫌いで、いやいやパートナーになってくれていたんですよね。裏でずっと私のこと、笑ってたんです…きゃっ!」

真島くんは、私の腕を引っ張り、体勢を変えると、たまたま近くにあった壁に、私の背中を押し付けた。そして彼は壁に片腕を押し当て、私の逃げ場が無くなった。所謂(いわゆる)、『肘ドン』というやつだ。
それから最後に、私の顎に手を添えると、軽く引き上げた。

「この口は、そんなくだらないことを言う為に付いてるのか?」

『黒いオーラに気をつけて。黒は突然やってくる。』
ひいおばあさんが言っていたそれは、このことだったんだ…。

「そうなのだとしたら、今度は演技じゃなくて、本気でキスするぞ。」

真島くんはずっと、私を騙していた…。
真っ黒なオーラで私を責める彼が怖い…。
呼吸が乱れる。苦しい…。逃げたい…。
気がつくと、私の目からは、沢山の涙が溢れ出ていた。