「私…は、さ、佐倉くんとは、何もありませんから…!」

そのまま勢いよく膝の裏で椅子を後ろに押し、立ち上がると、私は早足で教室を出た。

「ちょ、ちょっと!」

もし、佐倉くんのパートナーが、影石愛でなかったら…。
他の人だったら、事故とはいえ、佐倉くんとそのようなことになってしまったことを、きちんと謝った方が良いのだと思う。
しかし、相手が影石愛なのなら、話は別だ。
彼女はきっと私を陥れようとしている。
そんな相手に謝るなんて…、それは、彼女の思う壷だ。

「あ〜、藍!」

廊下に出て、壁に寄りかかり、今後どのようにすれば良いか冷静に考え込んでいると、右の方から見覚えのある顔の自分が、やってきた。
その顔を見て、私はほっとする。

「陽芽。」
「ねえ、聞いてよ。今日、懸くんの家に迎えに行ったらさぁ〜、また寝坊したから先に行っててって──」

陽芽が言い終わるか言い終わらないかするうちに、先程、私を問い詰めてきた3人が、私を追いかけて、廊下に出てきた。