「残念だったねー。あんたに甘い言葉をふっかけて、裏では2人で笑ってたんだ〜。でもさすがに藍ちゃんが可哀想かなーって思って、私が教えてあげることにしたの!」
「ふざけないで!!」

気がつくと、私の目からは涙が零れ落ちていた。

「真島くんは、そんな酷い人じゃない…!」
「あっれ〜?まだ広大のこと信じてるの?言っておくけど、広大って、あんたが思ってるような人じゃないから。」

影石愛が吐き捨てるようにそう言う。

「広大って結構チャラ系だよ。クラスの目立ってる男子や可愛い女子を引き連れて、ノリでイベントとかやっちゃうタイプ。」
「そんなの嘘だよ。」

私が見てきた真島くんは、真面目で、何事にも一生懸命で、間違ったことが大嫌いなタイプだ。

「広大の文化祭の演技、凄かったんでしょ?あんたも近くで見てたなら知ってるよね?広大は演技が上手なの。あんたを騙すことくらい、簡単よ。この高校に入ったのだって、女を弄ぶ為よ。」

私は今度こそ、もう何も言えなくなって、その場で涙を流しながら佇んだ。

「じゃあ、話はそれだけだから。」

滲んだ景色の中を影石愛が背中を向けて、颯爽と歩いていく。

「何も…、知らなかった…。」

影石愛と真島くんが知り合いだったことも、過去に付き合っていたことも、何も知らなかった。
でも、真島くんを責めることはできない。私だって、文化祭の時に起きた事故のことを、ずっと話していなかったのだから…。
背中しか見えなかったが、写真の中の真島くんは、ちゃんと真島くんで…、でも、私の知らない、まるで別人のような彼だった。
初めに深く干渉しないようにしようと言ったのは…、私の名前を呼んでくれなかったのは…、彼の陰に、影石愛という1人の女の子がいたからだった。
そう。私はずっと、遊び道具でしかなかったんだ…。