「こんばんはって言うのには、まだ早すぎるかなぁ?」

目の前には、影石愛が立っていた。

「どうして、ここに…。」
「藍ちゃんに話があってね〜。」
「話…?」
「2人きりでしたかったから、裕くんと桃野さんがいなくなるの、待ってたんだっ。」

『2人きり』という言葉に私は身構える。

「そんな怖い顔しないでよ〜。私は、藍ちゃんに良いことを教えてあげるだけだから!」
「良いこと…?」

嫌な予感しかしない。
きっとここで、彼女の話を遮って、とっとと家の中に入ってしまうのが、彼女を撃退するには1番良い方法なのだろう。
でも…、彼女に逆らったら、何をされるか分からない。

「取り敢えず、公園に行こう?昔、よく2人で遊んだ公園だよ。」
「公園…。」
「ほら、もたもたしてないで早く!」

影石愛が、私の腕を強く引っ張った。その反動で、私は歩き出す。
夕焼けはとても綺麗で…。でも私の心は動揺していて…。できればこの夕焼け空を、静かな気持ちで眺めたかった。でも、きっと、それはできない…。