映画の内容は、確かに水原が言っていた通り、恋愛ものであった。
過去の出来事がきっかけで、感情を失った少年が、定期的に記憶が消えてしまう感性溢れた少女に出会い、恋をして、次第に感情を取り戻していく物語だ。
映画が始まってから、暫く経つ。体感としては、おそらく約1時間。
物語も順調に進み、主人公の過去も明かされ、彼の感情は次第に生まれかけていた。
何だかその主人公の姿は、自分に少し似ている気がした。
俺も、昔は今よりも愛想が良かった。中学2年の時までは、周りに友達が沢山いて、おそらく皆から信頼されていた。
勉強も運動も、幼い頃から何故か割と簡単にできて、友達も沢山いる、『完璧少年』。そう呼ばれることもあった。
しかし、ある日を境に、俺の人生は180度変わってしまった。大切な人に裏切られて、友達もいなくなって、勝手に婚約者を決められて…。人生に絶望した。
もう、誰とも深く干渉しない。人から理不尽に絶望を与えられるくらいなら、強くなって、たった1人ぼっちでも、生きていく。
あの時、そう決めたんだ。
でも、いくら1人で生きていくとはいえ、一生独身でいるわけにはいかない。それはきっと、母が一番悲しむことだ。だから、母を安心させる為に、極力関わらずに、どうしても誰かと結婚したい。
だから俺はAI研究所附属高等学校に入学して、そこでできたパートナーとも、必要以上に関わらないと約束した…。彼女も恋愛を求めていないようだったから、都合が良かった。
恋も愛も何もいらない。事実上、結婚できれば良い。そう思っていた。
でも…。