「でも、そんなことして大丈夫か?酔ってる奴だと気持ち悪がられないか?」
「何言ってるの、真島くん。ノープロブレムに決まってるよ。」
「どうしてだ?」
「真島くんがイケメンだから!」

堂々と言っているが、内容には全く説得力が無い。

「イケメンはある程度攻めても、イケメンだから許すってなるんだよ。」

何だそれ。そんなわけがない。嫌なものは嫌だろ。
しかし、水原はこのデートを期待しているから、裏切るような真似はできない。
それに、今まで彼女の手を握ったことは何度かあるが、嫌がっている様子は無かったように思う。
そう考えると、やはりミッションをクリアするしかない。

「とにかく、そこは凄く重要なポイントだから!絶対にやってよ!」
「分かったよ…。」

俺は仕方なく頷く。

「じゃあ、そういうことで、俺は奏風ちゃんと帰るから、また明日!」

そう言うと、水原は、目にも止まらぬスピードでスクールバッグを持ち上げ、教室から出ていった。
水原の姿が完全に見えなくなってから、俺は大袈裟に溜息を着く。
冷静に考えて、何だか大変なことになってしまったかもしれない。
元々この学校に入学する前は、全てがどうでも良いと感じていた。
中3の頃、家族の間で大きな問題が起こり、俺は学校で色々あって、その結果、1人の女子を殴ろうとして、出席停止になった。そして、知らないうちに婚約者を勝手に決められていた。婚約者にも何度か会ったが、正直ピンと来なかった。趣味も性格も考え方も合わず、更に好きでもない人と結婚して、将来幸せになれるとはどうしても思えない。だから俺は、好きになれなくても、せめて相性の良い相手と結婚したくて、ここに来た。
だから初めは、パートナーにも全く興味が無かった。