「よし!このくらい教えれば完璧かな。」

全ての部活が休みになる木曜日。俺は水原から、デート当日の動きや、ポイントを、前回と同じ自習用の教室で教わっていた。

「じゃあ、最初から確認するね。先ず初めに──」
「その必要は無い。全て頭の中にインプットされているから。」
「さすが真島くん!それなら安心!」

恋愛は苦手だが、人から教えてもらったことを頭に入れるのは、普段の勉強とさほど変わりはないから得意だ。
まあ、実践できるかは別だが…。

「一応、1番大事なポイントだけ確認しておこう。何だったか覚えてる?」

それは特に覚えている。教わる時、水原が絶対に大事だと念を押して言っていたから。嫌でも頭の中に完全にこびり付いた。忘れる方が難しい。

「キスシーンで手を握る。だろ?」
「そう!」

どうやら、今度観に行く映画には、ラストにキスシーンがあるらしい。
ネタバレされたのはあまり納得いかなかったが、そのシーンで彼女の手を繋ぐように言われた。