「まあ、いいや。どちらかというと湖川さんは敏感なタイプじゃないから、ストレートに言っても良いと思うけど…、今回はさり気なく誘う作戦で行こう。」

水原が、指をパチンと鳴らした。

「先ずは一緒に出掛ける口実なんだけど、真島くんは湖川さんに感謝してることはある?」

感謝していること…。

「ある。」

あるも何も、感謝していることしかない気がする。いくらAIが相性で決めたとはいえ、俺みたいな奴と、嫌な顔せずにパートナーでいてくれているし、クラスで俺の良からぬ噂を流された時も、俺を信じ続けてくれていた。噂が本当だと言っても、ずっと…。

「良かった!それなら、お礼として一緒に出掛けることにしよう。」

水原が、手際良く黒板に、「デートの口実→お礼」と書き込んだ。

「じゃあ次はデートする場所!湖川さんは何が好きなの?」

彼女の好きな物…。
俺はそれをほとんど知らない。今まで、彼女のことを知ろうとしていなかった。
知る必要なんて無い。そして俺のことも知られる必要は無い。ずっとそう思っていたから…。
佐倉なら、彼女の好きな物を答えられるのかもしれない。
佐倉は、彼女の恋人でもパートナーでも親友でも幼馴染身でも親戚でも何でもないのに。
それなのにあの二人は、一緒にいて違和感が無い。そしていつもそれが俺の気持ちを複雑にする。