「……。」

広大は、暫く無言でいた。

「でも藍ちゃんは、蛍貴のことが好きみたいだね。何を考えているのかよく分からないあの子が感情的になるのは、いつも蛍貴が──」
「うるさい。…そんなこと、分かってんだよ。」

その様子じゃあ、本当に好きなんだ。分かり易い。

「ていうか、何でそんなこと知ってるんだよ。お前は、俺のパートナーと知り合いなのか?」
「知り合いっていうか、幼馴染み。」
「そうだったのか…。」
「あれ?知らなかったの?蛍貴は知ってたのに。」

愛ちゃんと広大があまりコミュニケーションを取ってなかったのって、本当だったんだ。

「本当に藍ちゃんのこと好きなんだね〜。広大には婚約者がいるのに。」

私が言うと、彼は大きく目を見開いた。

「お前、どうしてそれを…。」
「まあ、祖父から色々とね〜。っていうか、婚約者ができたの、私のせいだよね。ごめんね〜。」
「そんなくだらない話をする為にここに来たのかよ。だったら目障りだから帰ってくれ。」

そんなこと言ったって、私がただで帰るわけないのに。
「ねえ、広大。私と付き合わない?」
「そんなテンションで告白かよ。冗談でもくだらない。」

そう言うと、広大は更衣室を出ていった。