「はあ…。」

彼に手を振って別れてから1人になると、私は大きな溜息を着いた。
“つまらない。”
この世に生まれて、物心からついてからずっと、そう感じている。
どんなに努力をして勉強しても、所詮(しょせん)、学年1位にはなれない。
どんなに良い行いをしても、見返りがあるとは限らない。
どんなに相手を愛しても、愛されるとは限らない。
ああ、なんてつまらない世の中なのだろう。
全部じゃなくていい。少しだけでも思い通りになれば、私は報われるのに。
でも、私は諦めたくない。

「よし。」

小さな声で呟く。
目の前には体育館があり、中で剣道部が練習をしている。時間的に、そろそろ終わるころではないだろうか。
本当は昨日もここへ来たけれど、剣道部はいなかった。おそらく、格技場で練習していたのだと思う。
しかし、格技場の場所が分からなくて、昨日はそのまま家へ帰った。
他の人に格技場の場所を教えてもらうこともできたけれど、剣道部のイケメンを見に行くミーハーな女の子だと思われるのはプライドが許さなくて、諦めた。
体育館の入口には、沢山の女子が集まっている。
そこへ、背の高い剣道部だと思われる男の人がやって来た。