そんなこと、簡単には信じられない。
僕には何も取り柄が無くて、だからこそ、湖川さんにはただのクラスメイトだと言われてしまうし、桃野さんは僕に1度も興味を示さなかった。
そんな僕を、『気になる』だなんて…。

「どうして?」
「どうしてだろう。そういうのって、理由が無いものじゃない?」
「そうかな。」
「そうだよ〜。まあ、強いて言うなら、」

影石さんが更に距離を縮める。

「最強の相性だから、じゃない?」
「最強の…相性。」
「校内にいるどのパートナーよりも相性が良い。誰も私達の間には入れない。例え蛍貴の霊的な雰囲気が、特別なものだったとしてもね。」

霊的な雰囲気…?

「な〜んてね!冗談だよ。蛍貴の反応が面白いから、つい、揶揄(からか)いたくなっちゃった。」
「えっ?」
「じゃあ、私は用事があるから行くね。バイバイ。」
「あ、また明日。」

動揺している僕を他所(よそ)に影石さんは、さっさと歩いていってしまった。
不思議な少女だ。と僕は思う。彼女が現れた日から、僕は彼女に振り回されっぱなしだ。
今の、『霊的な雰囲気が特別』という言葉も、本当に冗談だったのか気になる。
まあ、何はともあれ、影石さんが反省していて、湖川さんに謝ったのなら、それほど心配する必要はないだろう。
昨日、裕さんに、大袈裟に話してしまったから、今からそれほど心配する必要は無いということを伝えなければ。
そう思い、僕は再びスマートフォンを取り出した。