「それは…、最近よそよそしいのは…、その…、さ、佐倉くんが酔った勢いで、わ、私にキスしてくるからですよ…!」

そう言って走り去る湖川さんを、僕は追いかけることができなかった。

「キ…ス…?」

キ…ス…、キ…、キ、キキキキ、

「キス!?」

どういうことだ…?僕はあの時、湖川さんにキスを…!?
そんな、そんなはず…!
記憶を辿ってみようとしても、あの日の出来事は、酔っていたであろう一部分が完全に切り取られていて、全く思い出せない。
到底信じられることではないが、あの日から湖川さんがよそよそしくなったことを思うと、納得がいく。

「蛍貴。」

文化祭が終わってから半年間も、湖川さんは僕にこのことを言えず、悩んでいたのかもしれない。だとしたら僕は、とんでもないことをしてしまった。

「蛍貴!」

後方から影石さんの声がして、振り返った。