やっぱり、おかしかっただろうか。
『お前、男だろ。』
『男ならスカート脱げよ!』
『脱〜げ!脱〜げ!脱〜げ!脱〜げ!』
昔、言われた言葉が脳裏を過ぎる。
やっぱり、私にスカートなんて、そんなの──

「や、やっぱり似合わないよね。昔から、私にスカートなんて──」
「な、何それ…可愛い!!天使?天使なのか!?無理。尊い。」
「え…っと。」
「やっぱり僕の目は間違っていなかった。藍は何を着ても可愛い!店員さんもそう思いますよね?」
「え、ええ、まあ。」

流石の店員さんも、完全に困ってしまっている。
お兄ちゃんは、たまにイタイところがある。まあ、そんなところも良いところなのだけれど。

「藍はこれ、気に入った?」
「うん。とっても。」
「よし!じゃあ、買います!」

そう言って、お兄ちゃんが財布を取り出した。
お兄ちゃんは、自分でお金を出すつもりなのだろう。しかし、これは私の服だ。出してもらうわけにはいかない。

「お兄ちゃん、いいよ。私が払うから。」
「いいんだよ。これは、今日一緒に出かけてくれたお礼。」
「で、でも…。」

こういう時、お兄ちゃんは一歩も引かない。昔から意思が強く、自分が決めたことは絶対に突き通すのだ。

「お、お兄ちゃん…?お二人は、ご兄妹だったのですか!?」

店員さんが驚いている。
無理もない。今の今まで、恋人同士だと思っていて、お兄ちゃんも否定しなかったのだから。

「違いますよ。僕達は兄妹ではありません。」
「では、どういう…?」
「それは、ご想像にお任せします。」

だから、どうして本当のことを言わないのか。

「私達は従兄妹なんです。」

私なんかと恋人だと勘違いされたら、お兄ちゃんが可哀想だと思い、私は自分の口から本当のことを言った。

「従兄妹だったんですか〜!仲良しでいいですね〜!」

先程まで困った様子をしていた店員さんは、すっかり笑顔に戻っていた。