影石愛が転校してきた次の日の昼休み、私は影石愛に呼び出された。

『昼休みに、靴箱の近くに来て。話したいことがあるの。』

もう、その手には乗らない。幼い頃から、何度も痛い目を見ている。
しかし私は、靴箱へ来た。
勿論、何の策も無しに来たわけではない。もしものことがあった時の為に、ももちゃんにもついてきてもらうことにした。
ももちゃんは今、近くの物陰に隠れている。
私の過去を知っているのは、陽芽とお兄ちゃんとももちゃん。この3人のことは、かなり頼りにしている。
しかし、過去を知っていると言っても、影石愛と面識があるのはお兄ちゃんと陽芽だけで、ももちゃんは影石愛と面識が無い。小学校は同じだったが、1度も同じクラスになったことがなく、名前も顔もあまり覚えていなかったみたいだ。先程影石愛が“あの時”の愛ちゃんであると言ったら、とても驚いていた。

「藍ちゃん、もう来てたんだ。」

しばらくすると、影石愛がやって来た。

「今来たところです。」
「嫌だな。どうして敬語なの?」
「貴方を警戒しているからです。」
「へえ。」
「それより、話とは何ですか?」

変な前ぶりは必要無い。私はできれば彼女と話がしたくないのだ。