「藍ちゃんはどうしてここにいるの？」
「えっと…、真島くんの部活が終わるのを、待っています。」
「真島くん？」
「私のパートナーです。」
「へえ。でも、ここにいて良いの？先生から呼ばれていたでしょ？」

影石さんがそう言うと、彼女は一瞬にして表情を強ばらせた。

「忘れてました…。」
「本当に？藍ちゃんは昔からしっかり者だから、なんか意外だな。」
「ごめんなさい…。」
「別に私に謝らなくていいよ。あ！そんなことより！」

影石さんが両手をパンッと叩いた。

「私と蛍貴、パートナーになったの。」
「えっ…？」
「私が転校してきたのはね、校内で1位の相性の相手が見つかったからなの。そして、それが彼。」
「……。」

湖川さんは何も言わずに俯いた。
その理由が、僕には分からない。
どうして、君はそんなにも悲しそうな顔をするのだろう。

「影石さん、その話は今度でも──」
「あー。だから、『影石』じゃなくて、『愛』だってばー。」
「そうだった。ごめん。」

やはり人の名前を呼び捨てするのは、僕は苦手だ。