「そうか。思った以上にすんなり話がまとまって、驚いたよ。じゃあ、今日から佐倉と影石、桃野と水原がパートナーだ。」
「分かりました。」

そう返事はしてみたものの、あっさりし過ぎていて、全く実感が無い。僕は影石さんのことを、何一つ知らないのだから。
しかし、よく考えてみると、パートナーのことを知らないのは、当たり前だ。桃野さんのことも、初めはどう接したら良いか、迷ったものだ。

「では影石、今この瞬間、君の転校が完全に決まった。おめでとう。」
「ありがとうございます。」
「話はそれだけだ。気をつけて帰れよ。」

先生がそう言い、僕達は教室を出た。
教室を出て直ぐに、桃野さんが興奮気味に僕の両手を握った。

「ありがとう!佐倉くん!この恩は一生忘れません!!」
「あ、うん。どういたしまして。」
「じゃあ、また明日!パートナーじゃなくなっちゃったけど、これからもクラスメイトとしてよろしくね。」

そう言うと桃野さんは、元気に笑顔で手を振りながら、帰っていった。
必然的に、僕と影石さんが2人きりになる。