私は、いつだって完璧でいなければならない。
勉強も、運動も、芸術も、人間関係も。そして──
恋愛も。
全て完璧に成し遂げるのが私。
私は最強で、私に勝る人なんていない。
でも…。
私は今までの人生で、たった一度だけ負けたことがある。

「お嬢様、到着致しました。」

執事の運転している車が、とある高校の前で止まった。

「ありがとう。」

私は車を降りて、外の空気を吸う。
高瀬AI研究所附属高等学校。

「へえ。まさかここにいたとはね。」

よりによっても、この、高瀬AI研究所附属高等学校に。

「お嬢様、もしかして、緊張しておられますか？」
「緊張？」
「ええ。」
「そんなものはしていないわ。」

『緊張』だなんてするわけがない。私がしているのは──

「そうね、強いていえば、ワクワクしている、という感じかしら。」
「それならよろしいのですが。」

最高にワクワクする。
私がこの高校に来たと知ったら、どんな顔をするかしら。早くその顔がみたい。

「お嬢様、なんだか今日はご機嫌がよろしいですね。」
「当たり前じゃない。」

だって、私がこの1年間、必死に立ててきた計画を、遂に実行できるのだから。