「えっと…。」
「あんなの、演技なんだから、気にするなよ。」

演技。

「完璧に演じたかったんだ。それに、今までの相性1位のパートナーが文化祭で…キス…してたのに、俺の代で途絶えさせるわけにはいかないだろ。」

あ、そうか。確かに。そんなこと、考えたことも無かった。演技。完璧な真島くんらしい判断だ。

「なるほどですね。」
「ああ。別に、俺が君のことを好きなわけじゃないからな。」
「はい、分かってますよ。」

でも、あれが演技だったとして…、その前の、
『絶対、俺のこと、好きにさせるから。』
という言葉は何だったのだろう。
まあ、きっと真島くんのことだから、それにも舞台をより良いものにさせる為の理由があったのだろうと思う。

「色々、舞台のことを考えてくださり、ありがとうございました。それから、直前に体育館を抜け出してしまって、すみません。」

真島くんは、こんなにも舞台のことを考えられていたのに。私は、軽率な行動をしてしまったかもしれない。

「いや、いいよ。」
「えっ?」
「君は俺じゃなくて、佐倉を選んだ。そういうことだろ…。」

真島くんが私に背を向けた。